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10の楽しみ方から見る新メディア形式・『ニコニコメドレー』の話

他人の企画 ニコニコメドレー

 こんにちは。きっかんと申します。
 この記事は狡猾な狐さんの企画、『伝道師になろう! Advent Calendar 2016』に寄稿しているものです。12/19日分の記事ということですね。
 ……遅刻しました……ごめんなさい。「始めたのがおそかったので、何日目のブログでも、12月25日までに投稿していただければOKです!」とあるのでここはひとつ。

 好きなものの魅力を、理論的に伝える。新たな視点・価値観を増やす――
 広く浅く、無限のアンテナを目指す自分にとって最高に主義と一致する企画だと思っています。岐阜という辺境に住むためにあまり参加はできていませんが、この記事以外にも近いうちになにかアクションを起こせるといいなあ、と考えております。

10の楽しみ方から見る新メディア形式・ニコニコメドレーの話

  1. はじめに
    1.1. 『組曲』とニコニコメドレーシリーズの誕生
    1.2. ニコニコメドレーって何なんだ ~2つの目線~
  2. ニコニコメドレー・10の楽しみ方
  3. 展望・おわりに
  4. 謝辞

 さて、テーマは『ニコニコメドレー』についてです。自分はTwitterなどでたびたび込み入った話をしていますが、今回は『伝道師になろう!』というわけで、基本的にはニコニコメドレーを知らない人向けに話を進めていきます。ディープな話はまた今度。
 今回どこまで噛み砕いた内容にするか迷いましたが、脚注でめちゃくちゃお節介をしているので、なんと発生の地である「ニコニコ動画」を知らなくても理解できる内容になっている……と思います。また、脚注を無視しても文章はそれなりに長いですから、適当にグミでも食べながら楽しんでいただけると幸いです。

 

1. はじめに

 まず説明しなければならないこと、それは「『ニコニコメドレー』とは何か?」ということでしょう。……なのですが……、

ニコニコメドレーとは何か、という解釈は旧来のファンの間ですら定まっていません。

 今回この理由で説明部分がかなり煩雑になってしまいました。しかしながら、これはニコニコメドレーの魅力から起因する奥深さだと考えています。
 魅力については後述するとして、ニコニコメドレーについてその誕生から説明を始め、ニコニコメドレーを"解剖"していきます。

1.1.『組曲』とニコニコメドレーシリーズの誕生

 時は2007年6月23日、動画投稿サイト「ニコニコ動画」にアップロードされた一つの動画に遡ります。

www.nicovideo.jp


 『ニコニコメドレー』を知らなくても、この『組曲『ニコニコ動画』』(以降『組曲』)をご存知の方は少なくないかもしれません。しも氏によって投稿されたこの作品は現在*1までに960万再生*2を記録しています。
 一つのムーヴメントを発生させたことはすでに数字から想像でき、実際にこの動画をきっかけにして、多くの作品が投稿されることになりました。しも氏の後を追うようにして多くの作者がニコニコメドレーを制作し、『ニコニコメドレーシリーズ』というタグ*3が誕生しました。(タグに付与されている「シリーズ」は、ニコニコ動画のタグの文化で生まれた接尾語ですが、意味合いとしては形骸化しています*4ニコニコ動画で『ニコニコメドレーシリーズ』をタグ検索すると、2200件以上の動画がヒットします。

 さて、「ニコニコメドレーシリーズ」タグを付けられた動画群では何が起こっているのでしょうか。これらが複数の楽曲を使用した動画であるのは、歌番組やカラオケなどで触れることのできるいわゆる「メドレー」となんら変わりません。しかしながら、ニコニコメドレーのファンのほとんどは「ニコニコメドレーは普通のメドレーとは違う」と考えています。ニコニコメドレーとは何か、何がニコニコメドレーたらしめているのか……について、次の節に進みます。

1.2. ニコニコメドレーって何なんだ ~2つの目線~

 ニコニコメドレーとは何か……ここでは、二つの解釈を紹介します。

 さて、適当に『ニコニコメドレーシリーズ』のタグが付与されている作品を視聴すると、先述の「メドレー」とは大きく異なる点があることに気づけるかと思います。ここでニコニコ大百科*5の記述を引用しましょう。

楽曲と楽曲の間は原則として滑らかに繋ぎ、あたかも一つの楽曲のように編曲される。これが一般的な「メドレー」と最も異なる点であり、ニコニコメドレー最大の特徴でもある。

ニコニコメドレーシリーズとは

 ニコニコメドレーと「メドレー」との差異は、この引用で説明できるでしょう。
 一般的な「メドレー」では、楽曲と楽曲の切り替わりはフェードアウトを利用するなど、各楽曲を一曲ずつ扱って纏めているように感じられます。対してニコニコメドレーでは、楽曲のある部分から別の楽曲のある部分へと滑らかに移行します。「あたかも一つの楽曲のように」を言い換えると、二曲のメロディラインを知らなければ、楽曲が変わったことにすら気づかないかもしれない、と言い換えることもできますね。

 「複数の楽曲を滑らかに繋ぎ、場合によっては重ね、一曲に聞こえるように編曲したもの」。これが、ニコニコメドレーとは何か、に対する一つ目の解釈です。既存のメドレーとは全く別の形式であり、「ニコニコメドレー自体が1つの楽曲である」という見方です。
  便宜上、これ以降ではこの解釈に因るニコニコメドレーを「ニコニコメドレー形式の楽曲」と呼ぶことにとします。
 この解釈を裏付けるものが、パイオニアであるしも氏の作品群から得られます。実はしも氏は『組曲』以前にもニコニコメドレーを投稿したことがありました。そのタイトルは、『ニコニコ動画中毒の方に贈る一曲』。また、『ニコニコ動画中毒の方に贈る一曲』、『組曲』、そしてしも氏の別作品『ニコニコ動画流星群』のキャプション(動画説明文*6)を見てみましょう。

ニコニコ動画(β・γ)で有名な曲をつないでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画中毒の方へ贈る一曲

ニコニコ動画(β・γ)で人気のあった曲などを繋いでひとつの曲にしてみました

組曲『ニコニコ動画』

ニコニコ動画で人気のある名曲(極一部、趣味)を繋いでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画流星群

 また、拙著『ニコニコメドレー概論』でしも氏と対談をした際にも、こちらが「一曲」という語の意味について質問した際、こう答えています。

そう、実はその「一曲」というのはすごく大事な言葉なんですよ。
なんでかというと、俺はあくまで「いろんな曲を繋ぎましたよ」って言うんじゃなくて、「その曲を繋いで一つの曲を作りましたよ」っていうニュアンスを出すために、わざわざ「一曲」とつけたんですよ。

-『ニコニコメドレー概論』 きっかん, 42-43p

 なるほど、ニコニコメドレーとはそれ自体一曲であることが大事な創作物なのだ、ということがお分かり頂けたかと思います。

 

 ……ん? ちょっと待ってください。ここでもう一度、先ほどの3作品のキャプションを確認してみましょう。

ニコニコ動画(β・γ)で有名な曲をつないでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画中毒の方へ贈る一曲

ニコニコ動画(β・γ)で人気のあった曲などを繋いでひとつの曲にしてみました

組曲『ニコニコ動画』

ニコニコ動画で人気のある名曲(極一部、趣味)を繋いでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画流星群

  さらに、『組曲』の後に一定の支持を得たニコニコメドレーを確認してみましょう。以下も動画のキャプションを引用したものです。

ニコニコ動画で有名な曲や人気のある楽曲を繋いでメドレーにしました。
ニコニコ動画摩天楼

ニコニコに関連するものを集めてメドレーにしました。
NICONICO RELATION

 これらの主張に共通しているのは、「ニコニコ動画で流行した(ニコニコ動画にゆかりのある)楽曲で作った」ということです。『組曲』がニコニコ動画を象徴するような人気の楽曲で構成した作品であったのは間違いなく、またニコニコ動画は複数ジャンルの横断を歓迎する土壌ができていました。そう、ニコニコメドレーは「オールスター」的創作物だ、という見方ができるわけです。
 また、『組曲』以降に指示された作品のキャプションでは、「一曲にした」とは書かれておらず、(ニコニコ)メドレーにした、と書かれていることも分かります。「ニコニコ動画に関連のある」という要素の方が重視されていることが分かります。
 「ニコニコメドレーとは、複数の楽曲を滑らかに繋げ、時に重ねるといった条件を満たし、かつニコニコ動画にゆかりのある楽曲で構成されているもの」。これが、ニコニコメドレーとは何か、に対する二つ目の解釈です。
 便宜上、これ以降ではこの解釈に因るニコニコメドレーを「ニコニコメドレーというオールスター作品」と呼ぶことにします。

 以上の2つの解釈が、ニコニコメドレーとは何か、という問いに対して多くの人が考える二つの回答になるでしょう。ニコニコメドレーが、ある解釈では「楽曲」として、またある解釈では「オールスター作品」として捉えられているわけです。

 簡単にどちらの解釈がより正しいとか、間違っているということを判断することはできない……と思います。むしろ、「ニコニコメドレーは考え方によっていろいろな創作物として見られる」と考えてみましょう! ニコニコメドレーの魅力は、さまざまな創作物の魅力を内包している点、とも言えるのです!

2. ニコニコメドレー・10の楽しみ方

 さて、ここまでで「ニコニコメドレーは既存の『メドレー』とは違う、複数の楽曲を滑らかに繋がるよう編曲したものなんだ」「いろいろな価値を持ち得るんだ」ということが分かってもらえたと思います。ここからは具体的に見どころ・楽しみ方を紹介しながら、その傾向を強く持ったオススメのニコニコメドレーを紹介していきます。
 ……とその前に、パイオニアであるしも氏のメドレーをもういちど押さえ、「だいたいニコニコメドレーってこういうものだな~」というのをチェックしておきましょう。以下に代表作3作品のURLを掲載します。

組曲『ニコニコ動画
ニコニコ動画流星群
七色のニコニコ動画


 上記3作品を含め、ここで紹介する動画は全て以下のマイリストにまとめてありますので、連続再生するなりつまみ食いして楽しんでいただけると幸いです。

初めての人におすすめのニコニコメドレー

 

見どころその1. 音楽作品としてアレンジを楽しむ!

 前提としてニコニコメドレーは音楽作品! 当然ながら作者の演奏やDTM*7の技量が如実に表れます。
 というわけで、まずは音楽的な面、アレンジの面で楽しめるニコニコメドレーを紹介しましょう。「ニコニコメドレー形式の楽曲」として名曲というわけです。

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 ほかのメディアでもそうですが、とくにニコニコ動画は過去の制作物に影響を受けたり、一人が大作を投稿すると他の作者によって別の作品も投稿される、という文化があります。『組曲』の投稿直後、立て続けに『ニコニコ動画『裏組曲』』『うらのうら音楽祭』『裏の裏の裏組曲(投稿者削除済み)』という3つのメドレーがそれぞれ別の作者から投稿されました。小ネタに秀でた『裏組曲』、選曲がぶっ飛んでいる『裏の裏の裏』に対して、アレンジで魅せるのがこの作品です。ずっと聴いていられる安心感があります。

 アレンジの他に、構成も重要な要素であると言えるでしょう。次の項目ではニコニコメドレーの構成について触れます。

見どころその2. ニコニコメドレーという、まったく新しい形式で構成を楽しむ!

 ニコニコメドレーは複数の楽曲を用いて編曲する音楽であるがゆえに、「同じメロディの繰り返しが出てこない」という特徴を持ちます。現存するほとんどの音楽では同一のフレーズを強調したり、AメロBメロサビなど展開単位で同じフレーズを繰り返したりしていることを考えると、異質な特徴であると言えます。
 (自分が音楽に詳しくないので)これが何をもたらすかの言語化は難しいのですが、他の音楽ならばサビを繰り返すような山場で、ニコニコメドレーなら場面に合わせてそれまでとは別の楽曲を用いるわけです。意表を突いたり、より効果的な感動を誘うことができると考えます。

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 『ニコニコメドレー的な何か、その3。』は2010年の頭に投稿された作品です。
 動画もアレンジも全体的にオシャレですが、とかく構成が素晴らしい作品です。特に動画終盤、8:15あたりからハンドクラップのテンポが上がり、最後の盛り上がりに移行する流れは感動的です。

 音楽的にはアレンジと構成が重要、というのは概ね間違っていないと思われます。しかし動画サイトに投稿されている作品である以上、まだまだニコニコメドレーには注目するポイントがあるわけです。次の項目では「動画」に注目します。

見どころその3. ニコニコメドレーも動画作品! 動画と併せて楽しむ!

 一方で、ニコニコ動画に投稿されているコンテンツである以上、音楽だけがその作品の要素とは言えないのではないでしょうか。しも氏の投稿したメドレーや『うらのうら音楽祭』は再生プレイヤーのビジュアライザが動いているだけですが、作品によっては動画に非常に力を入れるものもあります。「ニコニコメドレーというオールスター作品」として投稿された作品に多く、ニコニコ動画特有の文化である多ジャンルを横断した作品構成、カオス*8を感じることができるでしょう。

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 『ニコってる?!』も2010年に投稿された作品です。投稿時点でのニコニコ動画の有名どころ、オールスターをこれでもかと終結させた視聴覚作品になっており、時間を忘れて視聴してしまいます。『ニコってる?!』以前ではニコニコメドレーの作品の動画部分と言えば、プレイヤーのビジュアライザを流す方式か、使用曲に関連する動画や画像を流す方式*9が主流だったのですが、この作品を皮切りに関連動画やキャラクターの画像などを大量に使用する方式も(特にオールスター的なニコニコメドレーで)使われるようになりました。
 見どころその2. 的見地をすると、一度『レッツゴー! 陰陽師』で締め*10、終わるかと見せかけて『物語』を曲名や引用元アニメのタイトルなどに含む楽曲に静かに繋ぎ、『いままでのあらすじ』で最後の盛り上げを開始、ニコニコメドレー中に既に出てきた楽曲を立て続けにリプライズさせて締め、という流れが白眉です。音楽として聴いてもオールスターとして見ても楽しめるのですが、曲名やバックボーンに気づけるとプラスアルファ、なお面白さに気づける名作です。

 しかし、ニコニコメドレーの選曲のくくりは「ニコニコ動画にゆかりのある楽曲」でなければならないのでしょうか。次の項目では「オールスター的創作物」という着眼点はそのままに、別の可能性を提示しています。

見どころその4. "ニコニコ動画以外のくくりで選曲されたニコニコメドレー"を楽しもう!

 「ニコニコメドレー形式の楽曲」が複数の楽曲を扱う性質を持つ以上、オールスター的な創作物の題材としておあつらえ向きなのは間違いなさそうです。ここで一旦ニコニコ動画でのオールスター以外に目を向けてみると、新たな名作と出会うことができます。

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 『組曲『懐古』』はいわゆる「FLASH黄金時代」の楽曲で構成されており、『塊medley魂』は塊魂シリーズの楽曲で構成されています。どちらも聴きやすく、曲をしっていると「ああ!」と思わせてくれる名作です。他にも探してみると、自分の好きなジャンルの音楽を集めた「ニコニコメドレー形式の楽曲」が見つかるかもしれません。

 余談です。上記2作品はどちらも楽曲間を滑らかに繋げていることが確認でき、「ニコニコメドレー形式の楽曲」であることは間違いなさそうです。しかし、内容にニコニコ動画の要素はほぼ含んでいません。「ニコニコ動画オールスター作品」こそニコニコメドレーだという主張の前ではニコニコメドレーではないことになるでしょう。
 しかしながら、「これらの作品をニコニコメドレーを語る際に排斥するのはもったいない!」と強く思います。一部の"ニコニコ動画以外の楽曲を集めて構成されたニコニコメドレー形式の楽曲"には「アレンジメドレーリンク」というタグがつけられる傾向にあるようですが、あまり定着していないというのが現状です。
 これらのメドレーが「ニコニコメドレー」と呼ばれなくてもいいので、「ニコニコメドレー形式の楽曲」として何かいい名前が付けられ、ニコニコメドレー全体の発展に寄与していくといいなあ、と思っています。

 さて、「○○で流行った曲」とか「作品『○○』のBGM」で構成したというもののほかに、ニコニコメドレーには別のコンセプトを持たせることもできます。見どころその5. に進みましょう。

見どころその5. いろいろなコンセプトで制作されたニコニコメドレーを楽しもう!

 考え直してみると、「ニコニコ動画で流行した」というのは随分つかみどころのない選曲基準です。流行の基準が人によってあいまいですし、例えばゲーム実況動画などが人気であっても、その動画で流れていた楽曲までニコニコ動画で流行していたか、と言えるかは難しいですよね。どんどん深みにはまっていきそうです。
 逆に、「厳密なくくりでニコニコメドレーの選曲をするつもりはない」と言うことが言えるのかもしれません。どんな創作物にも目的なりコンセプトなりは必要ですが、例えば「ニコニコ動画に関係のある曲でまとめる」ということは、「オールスター作品」を作る目的の上で都合のいいテーマであるものの、「ニコニコメドレー形式の楽曲」を作る目的の上では必ずしも考えなくていいことが分かります。
 そこで、次の作品を紹介します。

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 『燃え盛るニコニコ動画』は「熱い曲」で構成されたニコニコメドレーです。熱いのは選曲だけではなく、なんとクラシックから『序曲1812年』を長めに採用してアクセントとしたり、ラストでJAM Project楽曲が畳み掛けたりなど、随所に盛り上がる工夫が凝らしてあります。コンセプト・タイトルの通り"燃える"ニコニコメドレーとして完成されており、寒さの厳しいこの季節に聴きたいニコニコメドレーです。

 さて、コンセプト・選曲の基準は「何らかの共通点を持つこと」にとどまりません。次の見どころではさらなるニコニコメドレーの可能性に触れていきましょう。

見どころその6. まるでパズル!? 二重三重に考えられた構成を楽しもう!

 この項目は実際にニコニコメドレーを見るのが早いです。こちらをどうぞ。

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 『しりとりメドレーDELUXE!』は、楽曲の繋ぎでしりとりをしているニコニコメドレーです。ニコニコメドレーとして滑らかに編曲したうえでしりとりを進めており、二段オチも秀逸。曲が切り替わるたびに「そう来たか!」と唸ってしまいます。

 『ニコニコ大連鎖』の動画では、いわゆるピタゴラ装置が大暴れしています。ニコニコメドレーを楽しみながら、ニコニコ動画を彩ってきた様々な映像を想起させてくれる楽しい作品です。

 これらの作品では、「一つの時間軸で立て続けに違うコンテンツを用いる」という点に着目していることが分かります。どこかパズル的な楽しみを含み、ニコニコメドレーの新たな可能性を感じさせます。
 ……パズルといえば、繋ぎや重ねでもそうなっている作品がありました。次の項目に進みます。

見どころその7. 複数の楽曲間の繋ぎの滑らかさ、重ねによる畳み掛けを楽しもう!

 ニコニコメドレーが「メドレー」と差異を持つ要素は「繋ぎが滑らかであること」でした。中には全く「曲が変わる違和感」なしに楽曲間の繋ぎが行われ、「まるで溶接ではないか!?」と思ってしまうような作品も存在します。

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 『ごっちゃに!』は繋ぎが秀逸なニコニコメドレーの筆頭として挙げられ、複数楽曲の移り変わりの滑らかさは他と一線を画すレベルです。特に「残酷な天使のテーゼ」から「ハレ晴レユカイ」への繋ぎ、「God knows...」と「エアーマンが倒せない」の掛け合いなどは印象的なのではないかと思います。
 また、『ごっちゃに!』は筆者が個人的に最も気に入っているニコニコメドレーでもあります。繋ぎが秀逸なだけではなく、他のニコニコメドレーではほとんど見られない「Aメロ→Bメロ→サビ」の流れを踏んで雰囲気を盛り上げている構成、ディレイ・ラマや初音ミクをニコニコメドレーの編曲に使用した斬新さなど、見るべきところが多くある作品です。

 閑話休題。ニコニコメドレーの重要な構成要素として、繋ぎや重ねが挙げられるわけですが、それらが効果的に使われているのを楽しむのもまた、ニコニコメドレーの楽しみ方であると言えるでしょう。

 さて、ニコニコメドレーの世界には繋ぎや重ねに特化させ、しかも短時間に矢継ぎ早に楽曲を切り替えていく作品群も存在するのです。

見どころその8. 曲密度の高いニコニコメドレーに挑戦してみよう!

 先ほどまでに紹介した作品群の中に、楽曲の密度(同時に演奏されている曲数や楽曲が移り変わる早さを指します)がきわめて高い部分があったのにお気づきでしょうか。『流星群』『七色』『ニコってる?!』『燃え盛る』『大連鎖』のラスト直前などが分かりやすいと思います。
 この部分のことを、ニコニコメドレーの業界では「カオスゾーン」と呼んでいます*11。"ここまでのハイライト"的な役割を果たしたり、締めに向けて畳み掛けたり、また単純にたくさんの楽曲が流れるのを楽しんだりできる効果があるとされています。

 そしてニコニコメドレーには、全編カオスゾーンで構成されているものも存在します……

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 『大合奏!ニコニコマシンガン(ββ)』はニンテンドーDSのソフト『大合奏!バンドブラザーズDX」で制作された*12ニコニコメドレーです。
 短いので聴いてみて下さい。元の曲を知っているか知らないかでも得られる感想が大きく異なってくると思うのですが、「なんじゃこりゃ!」と思ったのではないでしょうか。

 余談ですが、ニコニコメドレーで各曲が何小節使われるか、というのは実のところまちまちです。『うらのうら音楽祭』『何か、その3。』のように1曲を十分にとるニコニコメドレーもあれば、この作品のように短いものだと1小節前後で楽曲が切り替わってしまうものも存在します。「楽曲を非常に短く用いる」というのは非常にテクニカルな手法であり、楽曲の特徴的な部分を用いるか、動画などでそれを効果的に見せるかしないと、その楽曲が埋もれてしまうことになりかねません。「前後の繋ぎが違和感を持たないようにする」ことと加えて、曲芸のように見える相応の苦労が必要なテクニックです。

 ニコニコメドレーの作品群には、一般的なPCの作曲ソフトで制作されたものもあれば、今挙げた「バンブラ」で制作されたものも存在します。
 そして、なんと元の楽曲を編集して構成されたニコニコメドレーも存在するのです。

見どころポイントその9. 原曲繋ぎのニコニコメドレーを楽しもう!

 この項目も実際に見るのが早いと思います。こちらをご覧ください。

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 『おれとく!!』は打ち込みや演奏を行わず、使用楽曲を編集して構成したニコニコメドレーです。独特の選曲と絶妙な楽曲の合わせ方は他のメドレーではまず聞くことができません。
 原曲をそのまま使用したニコニコメドレーは、「ニコニコメドレーシリーズ」タグのほか、「ニコニコ原曲MIXシリーズ」というタグから個別に検索することができます。

 原曲繋ぎの長所として、同一のメロディラインを持つ別の楽曲(二次創作のアレンジ楽曲とその原曲)や、ある楽曲の歌ってみた・演奏してみたなどを自由に組み込みやすい点が挙げられます。それを活かして打ち込みのニコニコメドレーではできないような小ネタが仕込まれている作品もある……と思います。探してみて下さい。

 小ネタと言えば、ニコニコメドレーはその性質上いろいろなネタを仕込みやすい創作物の形態であると考えます。

見どころポイント10. 小ネタを楽しもう!

 ニコニコメドレー全体の構成については見どころポイント2. で挙げたとおりですが、数曲単位の流れになると、また違った魅力が見えてきます。
 わりとどの作品でもいくつかの小ネタは見つかるものですが、ここまで数年前のニコニコメドレーばかり紹介してきたので、最新のものから紹介します。

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 『ニコニコ動画十年祭』はつい先週投稿された、ニコニコ動画10周年を記念する作品です。この作品では「炉心融解→メルト」「チルノのパーフェクトさんすう教室→粉雪→Let It Go→吹雪」と言った曲名や曲のモチーフを関連させる繋ぎが多用されています。さながら連想ゲームを進めるように感じつつ、10年間のニコニコ動画を振り返ることができます。

 と、いうわけで……ニコニコ動画10周年に合わせ、ニコニコメドレーの見どころ、楽しめそうなポイントを10項目挙げ、説明させていただきました。全ての楽しみ方が伝わらなくても、本当にいろいろな視点から見ることができるんだなあ、ということが伝わりさえすれば十分です。なぜなら、おそらくニコニコメドレーにはまだまだたくさんの楽しみ方が存在し、この形式には無限の可能性があるのですから……。


3.展望・おわりに

 ここまでの内容で、ニコニコメドレーの魅力が少しでも伝わったのならば何よりです。せっかくなので、未来の話と、懸念していることについてお話をさせていただき、この記事の〆とさせていただきます。

 ニコニコ動画はサービス開始から10年経ち、当然のことながら動画の数はめちゃくちゃ増えました。各ユーザーが見る動画のジャンルというのは何かに固定され、なかなかかつての様なまとまりは見られないのではないか、と考えています。
 これはニコニコ動画オールスター的創作物としてのニコニコメドレーの製作では大きな障害物になる案件だと思います。局地的に流行している動画ばかりで、もう「ニコニコ動画のユーザーならみんな(ニコニコ動画で有名だと)知っている曲」なんてものは全く存在しないのではないか、とすら思います。
 また、ニコニコ動画が無くなったらニコニコメドレーはどうなってしまうのでしょうか。見どころポイント4. で紹介したようなニコニコ以外のテーマによるニコニコメドレーは、圧倒的に少数派なのです。また、「ニコニコメドレーシリーズ」のタグがつけられても外されてしまう環境下にあります。

 そう考えると、オールスター的な、まとめメディアとしてのニコニコメドレーの存在は薄氷の上にあるのではないか、と考えざるを得ません。ニコニコ動画10周年で多くのオールスター的ニコニコメドレーが投稿されたのは良い出来事でしたが、あれらの選曲は「10年の中での流行」を拾えばよかったため、現在のまとめ、とは言えないものだと考えています。
 一方で、オールスター的でないニコニコメドレーは、全体的に再生数などが「伸びていない」という現状にあります。オールスター的な作品は動画映えしやすく、動画サイトである以上どうしようもない事なのですが、これではニコニコメドレーの行く末を案じてしまう……わけです。

 ニコニコメドレーの業界が抱えている問題はそれだけではありません。趣味の域を超えないのです。何の縁か音楽ゲームに制作した曲を採用されたり、商業で音楽を制作するようになった"元"ニコニコメドレー作者はみんな新しくニコニコメドレーを作っていません。個人が趣味で制作する分に問題があるわけでは全くないのですが、人目に多く触れるニコニコメドレーの形式が徐々に使えなくなる今、「(音楽的な)レベルを上げて物理で殴れる」作者が不在の状態になっているのも、ニコニコメドレーの未来を考えると不安要素になっています。

 加えて、ニコニコメドレーは、楽曲として考えたとき、ポップスなどと比べて非常に再生時間が長いです。ゲーム音楽のようにループするわけでもなく、むしろ同じメロディを繰り返さないのが特徴になっています。これは作者にも負担だと思いますし、聞く側にとっても労力を要求するものなのだと考えています。


 ……ああ、導入の記事なのにダークサイドを見せてしまった。実はそういうわけで、今回ニコニコメドレーの紹介、プレゼンをさせて頂いたのは、一ファンとして多くの人に知ってほしいという思惑がほとんどではあるのですが、誰か製作者に慣れそうな人がこれを見て、「ニコニコメドレーという形式」に興味を持ってもらえる可能性が1模糊*13でもあればなあ、と考えているのもあります(その場合はご連絡いただければできる限りの追加説明などさせていただきます)。

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 ニコニコメドレー。「複数の楽曲を滑らかに繋いだ楽曲」という簡単な共通点で、あまりにも多くの魅力や、オリジナリティ、創作物としての役割を持たせられるすごいものだと考えています。これからも新しい切り口がたくさん見つかってほしいですし、そのために色々な人が視聴して、ニコニコメドレーについて考え、また制作されて欲しい、と思います。
 拙い文章ではありましたが、ニコニコメドレーの魅力が少しでも伝われば幸いです。長い記事を読んでいただきありがとうございました。

 

4.謝辞

 ニコニコ動画10周年おめでとうございます。ニコニコ動画が無ければ、こんなにも一つの「形式」に対して熱く語ることはありませんでした。本当に感謝しています。
 今回記事の執筆にあたりまして、日ごろから議論を重ね忌憚ない意見を与えてくれるeuchaeta氏、適当な問いかけについても建設的に考えてくれた親友RedMuffleR、作業通話でなんとか記事を書くメンタルを維持してくれたpotemoon氏に、この場を借りてお礼申し上げます。potemoon氏にはお礼としてニコニコメドレーを布教し、ほかの人にはお礼としてニコニコメドレー沼に沈む人物を一人加えさせていただきました。

*1:この記事では「2016年12月16日時点で」を「現在」と書いていますがご容赦ください。

*2:ニコニコ動画には3000万件を超える動画が投稿されていますが、累計再生数で12位を誇る驚くべき数値です。

*3:動画のジャンル・内容などを10項目まで付与し、検索できるようにしているものです。

*4:もとは名の通り一続きの作品群につけるタグのための接尾語でした。いつの間にか拡大解釈され、「ある動画に対する派生動画群」「同一の印象を抱かせる動画群」などのタグにも使われる接尾語になりました。しかし、そもそも同一の特徴を持つ動画を纏めるのがタグですから……

*5:ニコニコ動画の姉妹コンテンツ。タグや動画などの解説を一手に担っています。

*6:動画ページに付与できるようになっています。

*7:デスクトップ・ミュージック。パソコンと電子楽器で演奏する音楽や、そのような音楽の制作行為自体を指すこともあります。Wikipediaの項目はこちら

*8:ニコニコ動画で「一貫性のない」「得体のしれない」「何でもあり」といった意味合いで使われるスラングです。

*9:例えば上記の『何か、その3。』で採用されている方式です。

*10:これ自体はニコニコメドレーに置いて頻出の方法です。

*11:個人的にはわけわかんなかったら全部カオスゾーンだと思うのですが、楽曲の重ねが行われていない(楽曲の移り変わりだけ非常に早い)場合、移り変わりは早いけれども混沌とはしていないだろうと「ラッシュゾーン」と呼ばれて区別される傾向にあります。

*12:ニコニコ動画内にはこの「バンブラ」で作曲された作品が、ほかにもたくさんアップロードされています。ニコニコメドレーも少なくありません。

*13:10兆分の1。