下らないなら抱く。

よろしくしろよ。

10の楽しみ方から見る新メディア形式・『ニコニコメドレー』の話

 こんにちは。きっかんと申します。
 この記事は狡猾な狐さんの企画、『伝道師になろう! Advent Calendar 2016』に寄稿しているものです。12/19日分の記事ということですね。
 ……遅刻しました……ごめんなさい。「始めたのがおそかったので、何日目のブログでも、12月25日までに投稿していただければOKです!」とあるのでここはひとつ。

 好きなものの魅力を、理論的に伝える。新たな視点・価値観を増やす――
 広く浅く、無限のアンテナを目指す自分にとって最高に主義と一致する企画だと思っています。岐阜という辺境に住むためにあまり参加はできていませんが、この記事以外にも近いうちになにかアクションを起こせるといいなあ、と考えております。

10の楽しみ方から見る新メディア形式・ニコニコメドレーの話

  1. はじめに
    1.1. 『組曲』とニコニコメドレーシリーズの誕生
    1.2. ニコニコメドレーって何なんだ ~2つの目線~
  2. ニコニコメドレー・10の楽しみ方
  3. 展望・おわりに
  4. 謝辞

 さて、テーマは『ニコニコメドレー』についてです。自分はTwitterなどでたびたび込み入った話をしていますが、今回は『伝道師になろう!』というわけで、基本的にはニコニコメドレーを知らない人向けに話を進めていきます。ディープな話はまた今度。
 今回どこまで噛み砕いた内容にするか迷いましたが、脚注でめちゃくちゃお節介をしているので、なんと発生の地である「ニコニコ動画」を知らなくても理解できる内容になっている……と思います。また、脚注を無視しても文章はそれなりに長いですから、適当にグミでも食べながら楽しんでいただけると幸いです。

 

1. はじめに

 まず説明しなければならないこと、それは「『ニコニコメドレー』とは何か?」ということでしょう。……なのですが……、

ニコニコメドレーとは何か、という解釈は旧来のファンの間ですら定まっていません。

 今回この理由で説明部分がかなり煩雑になってしまいました。しかしながら、これはニコニコメドレーの魅力から起因する奥深さだと考えています。
 魅力については後述するとして、ニコニコメドレーについてその誕生から説明を始め、ニコニコメドレーを"解剖"していきます。

1.1.『組曲』とニコニコメドレーシリーズの誕生

 時は2007年6月23日、動画投稿サイト「ニコニコ動画」にアップロードされた一つの動画に遡ります。

www.nicovideo.jp


 『ニコニコメドレー』を知らなくても、この『組曲『ニコニコ動画』』(以降『組曲』)をご存知の方は少なくないかもしれません。しも氏によって投稿されたこの作品は現在*1までに960万再生*2を記録しています。
 一つのムーヴメントを発生させたことはすでに数字から想像でき、実際にこの動画をきっかけにして、多くの作品が投稿されることになりました。しも氏の後を追うようにして多くの作者がニコニコメドレーを制作し、『ニコニコメドレーシリーズ』というタグ*3が誕生しました。(タグに付与されている「シリーズ」は、ニコニコ動画のタグの文化で生まれた接尾語ですが、意味合いとしては形骸化しています*4ニコニコ動画で『ニコニコメドレーシリーズ』をタグ検索すると、2200件以上の動画がヒットします。

 さて、「ニコニコメドレーシリーズ」タグを付けられた動画群では何が起こっているのでしょうか。これらが複数の楽曲を使用した動画であるのは、歌番組やカラオケなどで触れることのできるいわゆる「メドレー」となんら変わりません。しかしながら、ニコニコメドレーのファンのほとんどは「ニコニコメドレーは普通のメドレーとは違う」と考えています。ニコニコメドレーとは何か、何がニコニコメドレーたらしめているのか……について、次の節に進みます。

1.2. ニコニコメドレーって何なんだ ~2つの目線~

 ニコニコメドレーとは何か……ここでは、二つの解釈を紹介します。

 さて、適当に『ニコニコメドレーシリーズ』のタグが付与されている作品を視聴すると、先述の「メドレー」とは大きく異なる点があることに気づけるかと思います。ここでニコニコ大百科*5の記述を引用しましょう。

楽曲と楽曲の間は原則として滑らかに繋ぎ、あたかも一つの楽曲のように編曲される。これが一般的な「メドレー」と最も異なる点であり、ニコニコメドレー最大の特徴でもある。

ニコニコメドレーシリーズとは

 ニコニコメドレーと「メドレー」との差異は、この引用で説明できるでしょう。
 一般的な「メドレー」では、楽曲と楽曲の切り替わりはフェードアウトを利用するなど、各楽曲を一曲ずつ扱って纏めているように感じられます。対してニコニコメドレーでは、楽曲のある部分から別の楽曲のある部分へと滑らかに移行します。「あたかも一つの楽曲のように」を言い換えると、二曲のメロディラインを知らなければ、楽曲が変わったことにすら気づかないかもしれない、と言い換えることもできますね。

 「複数の楽曲を滑らかに繋ぎ、場合によっては重ね、一曲に聞こえるように編曲したもの」。これが、ニコニコメドレーとは何か、に対する一つ目の解釈です。既存のメドレーとは全く別の形式であり、「ニコニコメドレー自体が1つの楽曲である」という見方です。
  便宜上、これ以降ではこの解釈に因るニコニコメドレーを「ニコニコメドレー形式の楽曲」と呼ぶことにとします。
 この解釈を裏付けるものが、パイオニアであるしも氏の作品群から得られます。実はしも氏は『組曲』以前にもニコニコメドレーを投稿したことがありました。そのタイトルは、『ニコニコ動画中毒の方に贈る一曲』。また、『ニコニコ動画中毒の方に贈る一曲』、『組曲』、そしてしも氏の別作品『ニコニコ動画流星群』のキャプション(動画説明文*6)を見てみましょう。

ニコニコ動画(β・γ)で有名な曲をつないでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画中毒の方へ贈る一曲

ニコニコ動画(β・γ)で人気のあった曲などを繋いでひとつの曲にしてみました

組曲『ニコニコ動画』

ニコニコ動画で人気のある名曲(極一部、趣味)を繋いでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画流星群

 また、拙著『ニコニコメドレー概論』でしも氏と対談をした際にも、こちらが「一曲」という語の意味について質問した際、こう答えています。

そう、実はその「一曲」というのはすごく大事な言葉なんですよ。
なんでかというと、俺はあくまで「いろんな曲を繋ぎましたよ」って言うんじゃなくて、「その曲を繋いで一つの曲を作りましたよ」っていうニュアンスを出すために、わざわざ「一曲」とつけたんですよ。

-『ニコニコメドレー概論』 きっかん, 42-43p

 なるほど、ニコニコメドレーとはそれ自体一曲であることが大事な創作物なのだ、ということがお分かり頂けたかと思います。

 

 ……ん? ちょっと待ってください。ここでもう一度、先ほどの3作品のキャプションを確認してみましょう。

ニコニコ動画(β・γ)で有名な曲をつないでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画中毒の方へ贈る一曲

ニコニコ動画(β・γ)で人気のあった曲などを繋いでひとつの曲にしてみました

組曲『ニコニコ動画』

ニコニコ動画で人気のある名曲(極一部、趣味)を繋いでひとつの曲にしてみました

ニコニコ動画流星群

  さらに、『組曲』の後に一定の支持を得たニコニコメドレーを確認してみましょう。以下も動画のキャプションを引用したものです。

ニコニコ動画で有名な曲や人気のある楽曲を繋いでメドレーにしました。
ニコニコ動画摩天楼

ニコニコに関連するものを集めてメドレーにしました。
NICONICO RELATION

 これらの主張に共通しているのは、「ニコニコ動画で流行した(ニコニコ動画にゆかりのある)楽曲で作った」ということです。『組曲』がニコニコ動画を象徴するような人気の楽曲で構成した作品であったのは間違いなく、またニコニコ動画は複数ジャンルの横断を歓迎する土壌ができていました。そう、ニコニコメドレーは「オールスター」的創作物だ、という見方ができるわけです。
 また、『組曲』以降に指示された作品のキャプションでは、「一曲にした」とは書かれておらず、(ニコニコ)メドレーにした、と書かれていることも分かります。「ニコニコ動画に関連のある」という要素の方が重視されていることが分かります。
 「ニコニコメドレーとは、複数の楽曲を滑らかに繋げ、時に重ねるといった条件を満たし、かつニコニコ動画にゆかりのある楽曲で構成されているもの」。これが、ニコニコメドレーとは何か、に対する二つ目の解釈です。
 便宜上、これ以降ではこの解釈に因るニコニコメドレーを「ニコニコメドレーというオールスター作品」と呼ぶことにします。

 以上の2つの解釈が、ニコニコメドレーとは何か、という問いに対して多くの人が考える二つの回答になるでしょう。ニコニコメドレーが、ある解釈では「楽曲」として、またある解釈では「オールスター作品」として捉えられているわけです。

 簡単にどちらの解釈がより正しいとか、間違っているということを判断することはできない……と思います。むしろ、「ニコニコメドレーは考え方によっていろいろな創作物として見られる」と考えてみましょう! ニコニコメドレーの魅力は、さまざまな創作物の魅力を内包している点、とも言えるのです!

2. ニコニコメドレー・10の楽しみ方

 さて、ここまでで「ニコニコメドレーは既存の『メドレー』とは違う、複数の楽曲を滑らかに繋がるよう編曲したものなんだ」「いろいろな価値を持ち得るんだ」ということが分かってもらえたと思います。ここからは具体的に見どころ・楽しみ方を紹介しながら、その傾向を強く持ったオススメのニコニコメドレーを紹介していきます。
 ……とその前に、パイオニアであるしも氏のメドレーをもういちど押さえ、「だいたいニコニコメドレーってこういうものだな~」というのをチェックしておきましょう。以下に代表作3作品のURLを掲載します。

組曲『ニコニコ動画
ニコニコ動画流星群
七色のニコニコ動画


 上記3作品を含め、ここで紹介する動画は全て以下のマイリストにまとめてありますので、連続再生するなりつまみ食いして楽しんでいただけると幸いです。

初めての人におすすめのニコニコメドレー

 

見どころその1. 音楽作品としてアレンジを楽しむ!

 前提としてニコニコメドレーは音楽作品! 当然ながら作者の演奏やDTM*7の技量が如実に表れます。
 というわけで、まずは音楽的な面、アレンジの面で楽しめるニコニコメドレーを紹介しましょう。「ニコニコメドレー形式の楽曲」として名曲というわけです。

www.nicovideo.jp

 ほかのメディアでもそうですが、とくにニコニコ動画は過去の制作物に影響を受けたり、一人が大作を投稿すると他の作者によって別の作品も投稿される、という文化があります。『組曲』の投稿直後、立て続けに『ニコニコ動画『裏組曲』』『うらのうら音楽祭』『裏の裏の裏組曲(投稿者削除済み)』という3つのメドレーがそれぞれ別の作者から投稿されました。小ネタに秀でた『裏組曲』、選曲がぶっ飛んでいる『裏の裏の裏』に対して、アレンジで魅せるのがこの作品です。ずっと聴いていられる安心感があります。

 アレンジの他に、構成も重要な要素であると言えるでしょう。次の項目ではニコニコメドレーの構成について触れます。

見どころその2. ニコニコメドレーという、まったく新しい形式で構成を楽しむ!

 ニコニコメドレーは複数の楽曲を用いて編曲する音楽であるがゆえに、「同じメロディの繰り返しが出てこない」という特徴を持ちます。現存するほとんどの音楽では同一のフレーズを強調したり、AメロBメロサビなど展開単位で同じフレーズを繰り返したりしていることを考えると、異質な特徴であると言えます。
 (自分が音楽に詳しくないので)これが何をもたらすかの言語化は難しいのですが、他の音楽ならばサビを繰り返すような山場で、ニコニコメドレーなら場面に合わせてそれまでとは別の楽曲を用いるわけです。意表を突いたり、より効果的な感動を誘うことができると考えます。

www.nicovideo.jp

 『ニコニコメドレー的な何か、その3。』は2010年の頭に投稿された作品です。
 動画もアレンジも全体的にオシャレですが、とかく構成が素晴らしい作品です。特に動画終盤、8:15あたりからハンドクラップのテンポが上がり、最後の盛り上がりに移行する流れは感動的です。

 音楽的にはアレンジと構成が重要、というのは概ね間違っていないと思われます。しかし動画サイトに投稿されている作品である以上、まだまだニコニコメドレーには注目するポイントがあるわけです。次の項目では「動画」に注目します。

見どころその3. ニコニコメドレーも動画作品! 動画と併せて楽しむ!

 一方で、ニコニコ動画に投稿されているコンテンツである以上、音楽だけがその作品の要素とは言えないのではないでしょうか。しも氏の投稿したメドレーや『うらのうら音楽祭』は再生プレイヤーのビジュアライザが動いているだけですが、作品によっては動画に非常に力を入れるものもあります。「ニコニコメドレーというオールスター作品」として投稿された作品に多く、ニコニコ動画特有の文化である多ジャンルを横断した作品構成、カオス*8を感じることができるでしょう。

www.nicovideo.jp

 『ニコってる?!』も2010年に投稿された作品です。投稿時点でのニコニコ動画の有名どころ、オールスターをこれでもかと終結させた視聴覚作品になっており、時間を忘れて視聴してしまいます。『ニコってる?!』以前ではニコニコメドレーの作品の動画部分と言えば、プレイヤーのビジュアライザを流す方式か、使用曲に関連する動画や画像を流す方式*9が主流だったのですが、この作品を皮切りに関連動画やキャラクターの画像などを大量に使用する方式も(特にオールスター的なニコニコメドレーで)使われるようになりました。
 見どころその2. 的見地をすると、一度『レッツゴー! 陰陽師』で締め*10、終わるかと見せかけて『物語』を曲名や引用元アニメのタイトルなどに含む楽曲に静かに繋ぎ、『いままでのあらすじ』で最後の盛り上げを開始、ニコニコメドレー中に既に出てきた楽曲を立て続けにリプライズさせて締め、という流れが白眉です。音楽として聴いてもオールスターとして見ても楽しめるのですが、曲名やバックボーンに気づけるとプラスアルファ、なお面白さに気づける名作です。

 しかし、ニコニコメドレーの選曲のくくりは「ニコニコ動画にゆかりのある楽曲」でなければならないのでしょうか。次の項目では「オールスター的創作物」という着眼点はそのままに、別の可能性を提示しています。

見どころその4. "ニコニコ動画以外のくくりで選曲されたニコニコメドレー"を楽しもう!

 「ニコニコメドレー形式の楽曲」が複数の楽曲を扱う性質を持つ以上、オールスター的な創作物の題材としておあつらえ向きなのは間違いなさそうです。ここで一旦ニコニコ動画でのオールスター以外に目を向けてみると、新たな名作と出会うことができます。

www.nicovideo.jp

www.nicovideo.jp

 『組曲『懐古』』はいわゆる「FLASH黄金時代」の楽曲で構成されており、『塊medley魂』は塊魂シリーズの楽曲で構成されています。どちらも聴きやすく、曲をしっていると「ああ!」と思わせてくれる名作です。他にも探してみると、自分の好きなジャンルの音楽を集めた「ニコニコメドレー形式の楽曲」が見つかるかもしれません。

 余談です。上記2作品はどちらも楽曲間を滑らかに繋げていることが確認でき、「ニコニコメドレー形式の楽曲」であることは間違いなさそうです。しかし、内容にニコニコ動画の要素はほぼ含んでいません。「ニコニコ動画オールスター作品」こそニコニコメドレーだという主張の前ではニコニコメドレーではないことになるでしょう。
 しかしながら、「これらの作品をニコニコメドレーを語る際に排斥するのはもったいない!」と強く思います。一部の"ニコニコ動画以外の楽曲を集めて構成されたニコニコメドレー形式の楽曲"には「アレンジメドレーリンク」というタグがつけられる傾向にあるようですが、あまり定着していないというのが現状です。
 これらのメドレーが「ニコニコメドレー」と呼ばれなくてもいいので、「ニコニコメドレー形式の楽曲」として何かいい名前が付けられ、ニコニコメドレー全体の発展に寄与していくといいなあ、と思っています。

 さて、「○○で流行った曲」とか「作品『○○』のBGM」で構成したというもののほかに、ニコニコメドレーには別のコンセプトを持たせることもできます。見どころその5. に進みましょう。

見どころその5. いろいろなコンセプトで制作されたニコニコメドレーを楽しもう!

 考え直してみると、「ニコニコ動画で流行した」というのは随分つかみどころのない選曲基準です。流行の基準が人によってあいまいですし、例えばゲーム実況動画などが人気であっても、その動画で流れていた楽曲までニコニコ動画で流行していたか、と言えるかは難しいですよね。どんどん深みにはまっていきそうです。
 逆に、「厳密なくくりでニコニコメドレーの選曲をするつもりはない」と言うことが言えるのかもしれません。どんな創作物にも目的なりコンセプトなりは必要ですが、例えば「ニコニコ動画に関係のある曲でまとめる」ということは、「オールスター作品」を作る目的の上で都合のいいテーマであるものの、「ニコニコメドレー形式の楽曲」を作る目的の上では必ずしも考えなくていいことが分かります。
 そこで、次の作品を紹介します。

www.nicovideo.jp

 『燃え盛るニコニコ動画』は「熱い曲」で構成されたニコニコメドレーです。熱いのは選曲だけではなく、なんとクラシックから『序曲1812年』を長めに採用してアクセントとしたり、ラストでJAM Project楽曲が畳み掛けたりなど、随所に盛り上がる工夫が凝らしてあります。コンセプト・タイトルの通り"燃える"ニコニコメドレーとして完成されており、寒さの厳しいこの季節に聴きたいニコニコメドレーです。

 さて、コンセプト・選曲の基準は「何らかの共通点を持つこと」にとどまりません。次の見どころではさらなるニコニコメドレーの可能性に触れていきましょう。

見どころその6. まるでパズル!? 二重三重に考えられた構成を楽しもう!

 この項目は実際にニコニコメドレーを見るのが早いです。こちらをどうぞ。

www.nicovideo.jp

www.nicovideo.jp

 『しりとりメドレーDELUXE!』は、楽曲の繋ぎでしりとりをしているニコニコメドレーです。ニコニコメドレーとして滑らかに編曲したうえでしりとりを進めており、二段オチも秀逸。曲が切り替わるたびに「そう来たか!」と唸ってしまいます。

 『ニコニコ大連鎖』の動画では、いわゆるピタゴラ装置が大暴れしています。ニコニコメドレーを楽しみながら、ニコニコ動画を彩ってきた様々な映像を想起させてくれる楽しい作品です。

 これらの作品では、「一つの時間軸で立て続けに違うコンテンツを用いる」という点に着目していることが分かります。どこかパズル的な楽しみを含み、ニコニコメドレーの新たな可能性を感じさせます。
 ……パズルといえば、繋ぎや重ねでもそうなっている作品がありました。次の項目に進みます。

見どころその7. 複数の楽曲間の繋ぎの滑らかさ、重ねによる畳み掛けを楽しもう!

 ニコニコメドレーが「メドレー」と差異を持つ要素は「繋ぎが滑らかであること」でした。中には全く「曲が変わる違和感」なしに楽曲間の繋ぎが行われ、「まるで溶接ではないか!?」と思ってしまうような作品も存在します。

www.nicovideo.jp

 『ごっちゃに!』は繋ぎが秀逸なニコニコメドレーの筆頭として挙げられ、複数楽曲の移り変わりの滑らかさは他と一線を画すレベルです。特に「残酷な天使のテーゼ」から「ハレ晴レユカイ」への繋ぎ、「God knows...」と「エアーマンが倒せない」の掛け合いなどは印象的なのではないかと思います。
 また、『ごっちゃに!』は筆者が個人的に最も気に入っているニコニコメドレーでもあります。繋ぎが秀逸なだけではなく、他のニコニコメドレーではほとんど見られない「Aメロ→Bメロ→サビ」の流れを踏んで雰囲気を盛り上げている構成、ディレイ・ラマや初音ミクをニコニコメドレーの編曲に使用した斬新さなど、見るべきところが多くある作品です。

 閑話休題。ニコニコメドレーの重要な構成要素として、繋ぎや重ねが挙げられるわけですが、それらが効果的に使われているのを楽しむのもまた、ニコニコメドレーの楽しみ方であると言えるでしょう。

 さて、ニコニコメドレーの世界には繋ぎや重ねに特化させ、しかも短時間に矢継ぎ早に楽曲を切り替えていく作品群も存在するのです。

見どころその8. 曲密度の高いニコニコメドレーに挑戦してみよう!

 先ほどまでに紹介した作品群の中に、楽曲の密度(同時に演奏されている曲数や楽曲が移り変わる早さを指します)がきわめて高い部分があったのにお気づきでしょうか。『流星群』『七色』『ニコってる?!』『燃え盛る』『大連鎖』のラスト直前などが分かりやすいと思います。
 この部分のことを、ニコニコメドレーの業界では「カオスゾーン」と呼んでいます*11。"ここまでのハイライト"的な役割を果たしたり、締めに向けて畳み掛けたり、また単純にたくさんの楽曲が流れるのを楽しんだりできる効果があるとされています。

 そしてニコニコメドレーには、全編カオスゾーンで構成されているものも存在します……

www.nicovideo.jp

 『大合奏!ニコニコマシンガン(ββ)』はニンテンドーDSのソフト『大合奏!バンドブラザーズDX」で制作された*12ニコニコメドレーです。
 短いので聴いてみて下さい。元の曲を知っているか知らないかでも得られる感想が大きく異なってくると思うのですが、「なんじゃこりゃ!」と思ったのではないでしょうか。

 余談ですが、ニコニコメドレーで各曲が何小節使われるか、というのは実のところまちまちです。『うらのうら音楽祭』『何か、その3。』のように1曲を十分にとるニコニコメドレーもあれば、この作品のように短いものだと1小節前後で楽曲が切り替わってしまうものも存在します。「楽曲を非常に短く用いる」というのは非常にテクニカルな手法であり、楽曲の特徴的な部分を用いるか、動画などでそれを効果的に見せるかしないと、その楽曲が埋もれてしまうことになりかねません。「前後の繋ぎが違和感を持たないようにする」ことと加えて、曲芸のように見える相応の苦労が必要なテクニックです。

 ニコニコメドレーの作品群には、一般的なPCの作曲ソフトで制作されたものもあれば、今挙げた「バンブラ」で制作されたものも存在します。
 そして、なんと元の楽曲を編集して構成されたニコニコメドレーも存在するのです。

見どころポイントその9. 原曲繋ぎのニコニコメドレーを楽しもう!

 この項目も実際に見るのが早いと思います。こちらをご覧ください。

www.nicovideo.jp

 『おれとく!!』は打ち込みや演奏を行わず、使用楽曲を編集して構成したニコニコメドレーです。独特の選曲と絶妙な楽曲の合わせ方は他のメドレーではまず聞くことができません。
 原曲をそのまま使用したニコニコメドレーは、「ニコニコメドレーシリーズ」タグのほか、「ニコニコ原曲MIXシリーズ」というタグから個別に検索することができます。

 原曲繋ぎの長所として、同一のメロディラインを持つ別の楽曲(二次創作のアレンジ楽曲とその原曲)や、ある楽曲の歌ってみた・演奏してみたなどを自由に組み込みやすい点が挙げられます。それを活かして打ち込みのニコニコメドレーではできないような小ネタが仕込まれている作品もある……と思います。探してみて下さい。

 小ネタと言えば、ニコニコメドレーはその性質上いろいろなネタを仕込みやすい創作物の形態であると考えます。

見どころポイント10. 小ネタを楽しもう!

 ニコニコメドレー全体の構成については見どころポイント2. で挙げたとおりですが、数曲単位の流れになると、また違った魅力が見えてきます。
 わりとどの作品でもいくつかの小ネタは見つかるものですが、ここまで数年前のニコニコメドレーばかり紹介してきたので、最新のものから紹介します。

www.nicovideo.jp

 『ニコニコ動画十年祭』はつい先週投稿された、ニコニコ動画10周年を記念する作品です。この作品では「炉心融解→メルト」「チルノのパーフェクトさんすう教室→粉雪→Let It Go→吹雪」と言った曲名や曲のモチーフを関連させる繋ぎが多用されています。さながら連想ゲームを進めるように感じつつ、10年間のニコニコ動画を振り返ることができます。

 と、いうわけで……ニコニコ動画10周年に合わせ、ニコニコメドレーの見どころ、楽しめそうなポイントを10項目挙げ、説明させていただきました。全ての楽しみ方が伝わらなくても、本当にいろいろな視点から見ることができるんだなあ、ということが伝わりさえすれば十分です。なぜなら、おそらくニコニコメドレーにはまだまだたくさんの楽しみ方が存在し、この形式には無限の可能性があるのですから……。


3.展望・おわりに

 ここまでの内容で、ニコニコメドレーの魅力が少しでも伝わったのならば何よりです。せっかくなので、未来の話と、懸念していることについてお話をさせていただき、この記事の〆とさせていただきます。

 ニコニコ動画はサービス開始から10年経ち、当然のことながら動画の数はめちゃくちゃ増えました。各ユーザーが見る動画のジャンルというのは何かに固定され、なかなかかつての様なまとまりは見られないのではないか、と考えています。
 これはニコニコ動画オールスター的創作物としてのニコニコメドレーの製作では大きな障害物になる案件だと思います。局地的に流行している動画ばかりで、もう「ニコニコ動画のユーザーならみんな(ニコニコ動画で有名だと)知っている曲」なんてものは全く存在しないのではないか、とすら思います。
 また、ニコニコ動画が無くなったらニコニコメドレーはどうなってしまうのでしょうか。見どころポイント4. で紹介したようなニコニコ以外のテーマによるニコニコメドレーは、圧倒的に少数派なのです。また、「ニコニコメドレーシリーズ」のタグがつけられても外されてしまう環境下にあります。

 そう考えると、オールスター的な、まとめメディアとしてのニコニコメドレーの存在は薄氷の上にあるのではないか、と考えざるを得ません。ニコニコ動画10周年で多くのオールスター的ニコニコメドレーが投稿されたのは良い出来事でしたが、あれらの選曲は「10年の中での流行」を拾えばよかったため、現在のまとめ、とは言えないものだと考えています。
 一方で、オールスター的でないニコニコメドレーは、全体的に再生数などが「伸びていない」という現状にあります。オールスター的な作品は動画映えしやすく、動画サイトである以上どうしようもない事なのですが、これではニコニコメドレーの行く末を案じてしまう……わけです。

 ニコニコメドレーの業界が抱えている問題はそれだけではありません。趣味の域を超えないのです。何の縁か音楽ゲームに制作した曲を採用されたり、商業で音楽を制作するようになった"元"ニコニコメドレー作者はみんな新しくニコニコメドレーを作っていません。個人が趣味で制作する分に問題があるわけでは全くないのですが、人目に多く触れるニコニコメドレーの形式が徐々に使えなくなる今、「(音楽的な)レベルを上げて物理で殴れる」作者が不在の状態になっているのも、ニコニコメドレーの未来を考えると不安要素になっています。

 加えて、ニコニコメドレーは、楽曲として考えたとき、ポップスなどと比べて非常に再生時間が長いです。ゲーム音楽のようにループするわけでもなく、むしろ同じメロディを繰り返さないのが特徴になっています。これは作者にも負担だと思いますし、聞く側にとっても労力を要求するものなのだと考えています。


 ……ああ、導入の記事なのにダークサイドを見せてしまった。実はそういうわけで、今回ニコニコメドレーの紹介、プレゼンをさせて頂いたのは、一ファンとして多くの人に知ってほしいという思惑がほとんどではあるのですが、誰か製作者に慣れそうな人がこれを見て、「ニコニコメドレーという形式」に興味を持ってもらえる可能性が1模糊*13でもあればなあ、と考えているのもあります(その場合はご連絡いただければできる限りの追加説明などさせていただきます)。

------------

 ニコニコメドレー。「複数の楽曲を滑らかに繋いだ楽曲」という簡単な共通点で、あまりにも多くの魅力や、オリジナリティ、創作物としての役割を持たせられるすごいものだと考えています。これからも新しい切り口がたくさん見つかってほしいですし、そのために色々な人が視聴して、ニコニコメドレーについて考え、また制作されて欲しい、と思います。
 拙い文章ではありましたが、ニコニコメドレーの魅力が少しでも伝われば幸いです。長い記事を読んでいただきありがとうございました。

 

4.謝辞

 ニコニコ動画10周年おめでとうございます。ニコニコ動画が無ければ、こんなにも一つの「形式」に対して熱く語ることはありませんでした。本当に感謝しています。
 今回記事の執筆にあたりまして、日ごろから議論を重ね忌憚ない意見を与えてくれるeuchaeta氏、適当な問いかけについても建設的に考えてくれた親友RedMuffleR、作業通話でなんとか記事を書くメンタルを維持してくれたpotemoon氏に、この場を借りてお礼申し上げます。potemoon氏にはお礼としてニコニコメドレーを布教し、ほかの人にはお礼としてニコニコメドレー沼に沈む人物を一人加えさせていただきました。

*1:この記事では「2016年12月16日時点で」を「現在」と書いていますがご容赦ください。

*2:ニコニコ動画には3000万件を超える動画が投稿されていますが、累計再生数で12位を誇る驚くべき数値です。

*3:動画のジャンル・内容などを10項目まで付与し、検索できるようにしているものです。

*4:もとは名の通り一続きの作品群につけるタグのための接尾語でした。いつの間にか拡大解釈され、「ある動画に対する派生動画群」「同一の印象を抱かせる動画群」などのタグにも使われる接尾語になりました。しかし、そもそも同一の特徴を持つ動画を纏めるのがタグですから……

*5:ニコニコ動画の姉妹コンテンツ。タグや動画などの解説を一手に担っています。

*6:動画ページに付与できるようになっています。

*7:デスクトップ・ミュージック。パソコンと電子楽器で演奏する音楽や、そのような音楽の制作行為自体を指すこともあります。Wikipediaの項目はこちら

*8:ニコニコ動画で「一貫性のない」「得体のしれない」「何でもあり」といった意味合いで使われるスラングです。

*9:例えば上記の『何か、その3。』で採用されている方式です。

*10:これ自体はニコニコメドレーに置いて頻出の方法です。

*11:個人的にはわけわかんなかったら全部カオスゾーンだと思うのですが、楽曲の重ねが行われていない(楽曲の移り変わりだけ非常に早い)場合、移り変わりは早いけれども混沌とはしていないだろうと「ラッシュゾーン」と呼ばれて区別される傾向にあります。

*12:ニコニコ動画内にはこの「バンブラ」で作曲された作品が、ほかにもたくさんアップロードされています。ニコニコメドレーも少なくありません。

*13:10兆分の1。

ニコニコメドレーの「論点」 vol.1 【立場】

きっかんです。
[近況報告] 大学を卒業しました。春休みとはなんだったのか! というぐらい、3月も生活に変化はありませんでしたね……。


 さて、今日からニコニコメドレーについての連載を始めていきます。のろのろ書くので長くなるかもしれませんが(ちなみに今日の記事自体は短めです)、お付き合いいただけると嬉しいです。
 今回は、連載の方向性を提示しつつ、テーマの一つである「立場」の話をします。

自分、この連載の「立場」

 まずは前置きから。

 みなさんは、今の「ニコニコメドレーを取り巻く環境のいい点、悪い点」をどのように考えていますか。「最近、再生数を大きく伸ばす動画がいくつか出てきた」とか、「選曲が難しい」とか、いろいろな回答が挙げられると思います。中には、「コメントの内容が云々」というのも挙げられるかもしれません。

 それでは、それらの考えは、どんな「立場」によるものなのでしょうか。
 一作者、一試聴者の意見や思いであることは間違いないと思います。でも、作者(視聴者)として、どんな基準でいい点(悪い点)だと思うのか、というのは人によって全然違うのではないでしょうか。

 自分は、かねてからTwitterなどで、「ニコニコメドレーの良さはいろいろな方向から考えることができる」と主張してきました。もっと根本的に言うと、「ニコニコメドレーって何?」という問いに対して、答えは無限にある、と考えているわけです。

 Twitter2chのニコニコメドレー総合スレにおいて、延々(最近はあまり見ませんが)続いてきた「ニコニコメドレーの定義」問題。それに答えが出ないのはなぜか、ずっと考えています。その大きな理由の一つとして、ニコニコメドレーが「1通りにしか解釈できないようなものではない」という重大な性質を持ち、いろいろな捉え方をなされて語られている、という点が挙げられるのではないか。自分はそう考えています。

 前置きが長くなりました。自分やこの連載の「立場」は、「ニコニコメドレーの捉え方を提示する立場」です。メタ的に表現するなら、「ニコニコメドレーに対する立場を明確にする立場」と言えるかもしれません。

 ニコニコメドレーがいろいろな文脈で語られている現状を整理し、まとめることで、ニコニコメドレーについて語りやすい土壌を作りたい。ニコニコメドレーをいろいろな視点から見られるようにして、製作や鑑賞に新たな選択肢を加えたい。いろいろな人が持っているニコニコメドレーの様々な魅力を把握し、共有したい。そのように考えています。

じゃあ連載で何するの?

 ニコニコメドレーの連載でありながら、音楽的な指南をしたり、作り方に対して助言を行ったり、投稿されたニコニコメドレーについてコメントを残したりする、というようなことは、積極的には行わないつもりです。では何を書いていくのか。
 例えば、先日頒布された「ニコニコメドレーレビュー本」では、数人のレビュワーがそれぞれ全く違う切り口・採点基準でニコニコメドレーのレビューを行っていました。それは具体的にどのような視点なのかを、明確にしてみる。
 例えば、「ニコニコメドレーの系統」と題して、時系列順にニコニコメドレーを遡り、多くの作者(視聴者)に影響を与えた作品について考察する。どんな価値観が重要視されていたかについて考える。
 このような記事を投稿していきます。読者のみなさんに、ニコニコメドレーの「新しい価値観」を与えたり、ニコニコメドレーの味わい方について考えてもらうきっかけになったりすれば、自分は幸せです。

次回予告

 さて、ここまで具体的な話をほとんどしないで次回予告になってしまいました(書く時間をあまり用意できなかったのもあるのですが)。
 次回は、ニコニコメドレーにおける「選曲」について書いていきます(予定は変更になる場合があります)。「曲に対する思い入れは必要か?」「前後、構成の中にその曲が活きるか?」などを、いろいろな立場から考えます。

 それでは、この論点が道しるべになることを祈って。失礼します。

連載のおしらせ / ニコニコメドレーの「論点」 vol.0

お久しぶりです。きっかんです。

まずは近況報告です。今月の頭の時点で卒業発表及び学会発表を無事に終え、まあ暇になるだろうと思っていたのです。全然そんなことはありませんでした……。

5日ぐらい前に、ツイートで「ニコニコメドレーについて2/20までにまとめよ」ということを言っており、いろいろと言語化のために頭を動かしてきたのですが、2/20は昨日でした。かつ現在も、一つの記事としてまとまりのある文章にはなっていない状態です。

 

さて。1日ずつ〆切を伸ばしてもしょうがないというのは経験的にわかっています。また、これは予想できていたことですが、結構膨大な分量になりそうでもあります。

そこで、「ニコニコメドレーに関する連載」をこのブログ上で行おう、という運びになりました。4月の頭からできるとよい感じです。

連載について

ニコニコメドレーについての記事をいくつか書きますが、事前に「自分の立場」について述べておこうと思います。

・ニコニコメドレーの「魅力」を言語化する。
・ニコニコメドレーについて、現状ではさまざまな文脈や視点で語られているのを明確にする。読者の方に「自分はこの視点でニコニコメドレーを楽しんでいるのだな」というのを考えてもらいたい。

ということです。

連載のタイトルを『ニコニコメドレーの「論点」』としまして、春から頑張っていきます。よろしくお願いします。

 

なお、当ブログへのコメント、Twitterの@bowbwinアカウント宛のリプライなどで、感想や意見、扱ってほしいテーマなどはいつでも受け付けております。また、この記事をきっかけにTwitterでニコニコメドレーTLになった際、できるだけ多くの話題を捕捉したいと考えておりますので、ハッシュタグ 「 #ニコメドの論点 」を掲げさせていただきます。
重ねてよろしくお願いします。

トランプゲーム『二次方程式ゲーム』

先日Twitterで,『素数大富豪』というゲームを見ました.

 

素数大富豪』について,Twitterの検索結果はこちら.

大富豪の基本的なルールは踏襲しつつ,より大きな素数を作って出さなければならない……というゲームのようです.
実際にプレーしたことはないのですが,手札によっていろいろな戦略が考えられそうですし,大富豪のもつ「弱いカードはどうやっても強くなれない」をカバーしたよいゲームであると考えています.

 

さて,『素数大富豪』のうわさを見聞きしていたとき,あることを思い出しました.
そう……自分は過去に,トランプを使った数学のゲームを考案していたのです!

今回は,そのトランプゲーム『二次方程式ゲーム』をご紹介しようと思います.
二次方程式というだけあって,高校生レベル以降の数学は必要になりません.

ルール

・遊ぶ前に

必要なもの:トランプ1組(以上)のみ
2~4人で遊べます,トランプを2組以上に増やせば5人以上も可? (未確認)
トランプの1~10はそれぞれ書いてある値として扱いますが,絵札3種類は全て「1」として扱います.

・準備

各プレイヤーにトランプを10枚ずつ配り,親を決めておきます.
残りのカードは場札として,裏向きに重ねておいておきます.

・あそびかた

親から時計回り(任意の順番)に,
ax^2 + bx + c=0 が正の整数解を持つような二次方程式をつくり,そのa,b,cにあたるカードを手札で用意します。
各項の正負は自由に決めることができます.たとえば,4のカードは4としても-4としても使えます.

二次方程式ができたら,式を発声しながら,3枚のカードを自分の前に置きます.
このとき,負の整数として使ったトランプは,横向きに置いてください.
二次方程式が作れないような場合は,場札から1枚引いて次の人に親を譲ります.

以下に例を3つほど掲げます.

f:id:ktzkn:20160301191533j:plain

1. x^2 - 7x + 6 = 0
2. x^2 - 2x - 8 = 0
絵札は1として扱うことに注意しましょう. また,正の整数解は1つでもあればOKです.
3. 3x^2 - 8x - 3 = 0
少し難しい形も考えることができます.

------

親が二次方程式を出したら,10秒数えます.
その間に,子は「二次方程式の解になるような値」のカードを持っているかどうか急いで探し,持っているならば自分の前に出します.
このとき,一番早く解を出したプレイヤーのみが受理されます.
上記1.の「x^2 - 7x + 6 = 0」であれば,1か6のカードを前に出すことができます.
上記2.の「x^2 - 2x - 8 = 0」では,4のカードしか出すことができません.
10秒の間に誰も解を出せなければ,親が二次方程式の解を出すことができます.

二次方程式の解を出すことに成功したプレイヤーは,解の値以下の枚数,手札を捨てることができます.また,「親が二次方程式を作るために場に出したカード」「二次方程式の解として場に出したカード」は,いずれも手札からなくなったものとして扱います.
これを繰り返し,手札が早くなくなったプレイヤーが勝利です.
最後の一人になるまで続けます.

簡単なFAQ

Q. 親が二次方程式を作って手札がなくなり,子が解を出してこちらも手札がなくなった! このとき勝敗は?
A. 親が二次方程式を完成させた段階で親のあがりとみなします。解を出して手札がなくなった子はその次にあがった,とみなします.

Q. 二次方程式が正の整数解を持っていなかった! or 二次方程式の解とは違う値を出してしまった! こんなときどうする?
A. 正の整数解を持たない二次方程式を出し,それが指摘された場合,二次方程式を作るのに使用したカードは全て手札に戻さなければなりません.また,ペナルティとして場札から2枚引き,親は次の人に移動します.
二次方程式の解とは違う値を出してしまった場合は,そのカードを手札に戻さなければなりません.ペナルティとして場札から2枚引きます.また,違う値を出したプレイヤー以外のプレイヤーは,引き続き解の値を出すことができます.親は10秒のカウントを途中から続けてください.

 

------

 

以上がゲームの内容です.実際にプレーしてみると,「難しい二次方程式をつくれるか」「手札をどのように消費するか(二次方程式を作って3枚ずつ手札を減らしてもよいし,解を出しまくって手札を捨てるのもよい)」「1として扱うカードの使いどころ」など,いろいろ考えるところのあるゲームであることがわかるかと思います.

このゲームのテクニックや個人的な戦法などは,また次の機会にしようと思います.

七章 竜宮城 - 昔話攻略まとめ wiki

助けたカメの背中に乗って、乙姫などの本拠地である竜宮城に乗り込むことになる。

竜宮城では無料でHPが回復できるほか、優秀なNPCである魚たちが戦闘に加勢してくれる。シナリオ中では最も効率よく経験値稼ぎができる場所なので、今後に備えて浦島のレベルを十分に上げておくのがよいだろう。

この章のボス戦は、なんと味方であるはずの乙姫と戦うことになる。帰る理由を思い出した浦島に、乙姫が説得してくるのだ。殺生が目的ではないためか、そこまで苦戦する相手でもないのだが、この章は強制的に浦島一人で冒険しなければならなくなるため、アイテムやMPなどのリソースは管理しておくこと。

ちなみに、六章でカメを助けていない場合は、海辺まで歩いて、カメのイベントをこなさなければならない。

フローチャート

  • 釣りをしようとしたところをカメに声をかけられる。
    -そのため、何らかの釣竿は必須。竜宮城ではアイテム枠が実質1つ少ない状態になる。
  • カメに乗る。竜宮城までは一本道。
    -カメは仲間にならない。
    -この先の竜宮城とマップ「竜宮上への道」はシナリオが進むと二度と行けなくなってしまう。アイテムを取り逃したくない場合は注意すること。
  • 竜宮城につく。乙姫と会話する。
    -途中の選択肢は「カメさんが困っているようでしたから、放ってはおけませんでした」を選ぶと乙姫からもらえる褒美が少し多くなる。
  • ダンジョン「竜宮城」の探索
  • 「竜宮城の奥地」でボス戦「乙姫の説得」
    -「玉手箱」を100%ドロップする。

意識高い系昔話『ブルー・オーシャン太郎』

 むかしむかし、あるセグメントに、ワーク・ライフ・バランスを意識して未来への投資を続ける浦島太郎というノマドワーカーがいました。
 ある日、浦島がコワーキングスペースを通りかかると、子どもたちがマクロなカメを捕まえていました。そばによって見てみると、子どもたちがみんなでカメをいじめています。

「お世話になっております。マクロなカメの件につきまして、かわいそうですので、逃がしてあげたほうがベターかと存じまして」
 と、浦島は子どもたちにアプローチしました。対して、子どもたちは、
「お世話になっております。マクロなカメの件ですが、弊社が、やっとの思いで得たベネフィットでございます。どういった処遇にしようと、弊社マターではないかと考えています」と返答しました。

 見るとカメは涙をハラハラとこぼしながら、浦島を見つめています。
 浦島はバジェットを取り出すと、子どもたちにアセットを差し出して言いました。「ご返答ありがとうございます。それでは、弊社がこのアセットをペイしますので、そのカメをおじさんと契約させていただく、という落としどころはどうでしょうか」
「なるほど。それならアグリーします」

 こうして浦島は、子どもたちをコンバージョンさせるネゴに成功しました。

コアコンピタンスに問題はありませんでしたか。もう、捕まるようなオポチュニティがないようにしてください」と、ASAPでカメを海の中へ逃がしました。

 

 さて、それから二、三日たったある月のイッピ、浦島が海に出かけて魚を釣っていると、「……浦島さん、……浦島さん」と、誰かが呼ぶ声がします。
「おや? 誰が呼んでいるのだろう」
 すると、「わたしですよ」と、ひょっこりとカメが頭を出して言いました。

「お世話になっております。先日は助けていただいて、ありがとうございました」
「ああ、あの時のカメさん。ご無事なようで、フィードバックがあって安心しました」
「はい、おかげで命が助かりました。ところで浦島さんは、竜宮へ行った事がありますか?」
「竜宮ですか……、弊社ではまだナレッジ化されておりません、恐れ入ります」
「竜宮は海の底にございます。予定のほうをすり合わせて、竜宮にいらっしゃいませんか」
「海の底に行くのは、物理的に難しくはないのでしょうか。ファクトベースならばよいのですが」
「はい。ジャストアイデアですが、わたしがお連れしましょう。私の背中へ乗ってください。"潜れる化"しましょう」
 カメは竜宮をプッシュする、グロースハッカーでした。
 カメは会話のイニシアティブを握り、浦島とコンセンサスをとりました。
 浦島を背中に乗せたカメは、海の中をずんずんともぐっていきました。

 海の中にはまっ青な光が差し込み、昆布がユラユラとゆれ、サンゴベースの林がどこまでも続いています。鮮やかな景色は、パラダイムシフトが起きていました。
 浦島は周りの景色を視野にいれつつ、カメにつかまっていると、やがて立派なご殿へ着きました。


「うまくドライブしました。このご殿が竜宮です。さあ、こちらへ」
 カメに案内されるまま進んでいくと、この竜宮のエグゼクティブの乙姫が、クラウドソーシングの魚たちと一緒に浦島を出迎えてくれました。
「ようこそ、浦島さん。わたしは、CEOの乙姫です。このあいだはうちのプロパーであるカメを助けてくださって、ありがとうございます。成功フィーといってはいやらしい話になりますが、竜宮をご案内します。どうぞ、アジャイルに直帰するなんて言わずに、ゆっくりしていってくださいね」

 浦島は、竜宮の広間ヘ案内されました。用意された席に座ると、魚たちが次から次へと素晴らしいローンチを運んできます。
 ふんわりとモチベーションを上げる音楽が流れて、ポリバレントプレーヤーたちの、それは見事な踊りが続きます。
 コストリダクションもアジェンダになっておらず、ここはまるで、天国のようです。
 そして、「もう一日、ペンディングしてください。もう一日、リスケしてください」と、乙姫さまに言われるまま竜宮で過ごすうちに、三年の月日がたってしまいました。

 

 浦島は、家族やアライアンスをオミットしたことが、ボトルネックになっていました。
 そこで浦島は、ディシジョンして、乙姫さまに言いました。
「乙姫さま、今までありがとうございます。ですが、もうそろそろ家へ帰らせていただきます」
「帰られるのですか? よろしければ、このままインタラクティブなコミュニケーションを続けては?」
「いいえ、わたしをフォローする者もおりますので」
 すると乙姫さまは、さびしそうに言いました。
「……リバイズされる気はないのですね。それはおなごりおしいです。では、おみやげに玉手箱を差し上げましょう」

「玉手箱?」
「はい。この箱には浦島さんが竜宮で過ごされた『時』が入っております。ただし、この箱を一度開けてしまうと、今までの『時』が戻って、ドラスティックな変化が起きてしまいますので、マストで開けてはなりませんよ」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
 乙姫さまと別れた浦島は、またカメに送られて、直帰しました。

 

 地上に戻った浦島は、まわりを見回して驚きました。
「わずか三年でずいぶんと様子が変わったな。環境の変化にフレキシブルに対応しているのだなあ」
 浦島が釣りをしていた場所も、イメージとのキャズムがありました。
 浦島の家はどこにも見当たりませんし、出会う人も知らない人ばかりです。

「私の家はどうなったのだろう。デファクトスタンダードに大きな変化があったのだろうか、みんなバタバタしているだけなのだろうか
……すみません。浦島の家を知りませんか」
 浦島が一人の老人に尋ねると、老人は少し首をかしげて言いました。
「浦島という人なら七百年ほど前に海に出たきり、帰らないそうですよ」
 浦島は大変驚きました。竜宮での三年はこの世の七百年にあたるのでしょうか。

「家族もアライアンスも、みんな死んでしまったのか……リスクヘッジPDCAサイクルをしっかりしておけばよかった」
 がっくりとモチベーションを落とした浦島の目に、玉手箱が入りました。
「先方の乙姫さまによると、この玉手箱には『時』を戻すポテンシャルがあるらしい。これを開ければ、自分が暮らしていた時に戻れるのではないか」
 そう思った浦島は、開けてはいけないと言われた玉手箱のほうを、開けてしまいました。

 

 玉手箱の中から、真っ白の煙が出てきました。
「これは……イノベーションだ」
 煙の中には、竜宮や乙姫さまの姿が映りました。楽しかった三年間が次々と"見える化"されていきます。
「ああ、私は先方の竜宮へと戻ってきたんだ」
 浦島は喜びました。

 しかし、玉手箱の煙は次第に薄れていきました。
 その場に残ったのは、髪も髭も真っ白の、よぼよぼのM3層になった浦島だったのです。 

国語辞典ナイト2の感想など

昨年開催された国語辞典好きのためのイベント、「国語辞典ナイト」がまた開催されると聞いて、自分にできたことは何か。

ある程度卒業論文に区切りをつけ、USTREAMでの配信を視聴することが精いっぱいでした。

そのため、現場の雰囲気を味わってはいませんし、USTREAMでは欠けていた冒頭部分などは知らない、ということを前置きしておきます。

 

それでも、国語辞典ナイト2は、僕の"辞書魂"を再び燃え上がらせるには十分なイベントでした。うおおおお。

というわけで、熱のこもった感想文をしたためようと思いました。

このイベントが全国の国語辞典好きの方々の関心事となっているのは明らかなようですので、なんか人とは違う見地で感想が書ければな、と思います。

 

辞典の重要な2つの魅力を存分に味わえるイベントだった

国語辞典、ひいては辞典の魅力とは何か。僕は『一つの意思で、たくさんのことをまとめてあることだ』という、一つの回答を持っています。

 前半の「横断検索」および「総選挙」のための紹介コーナーでは、それぞれの国語辞典の意志を別々に触れることができました。

いろんな辞書で作風が違う、ということは、国語辞典好きの方々はご存知のことであろうと思いますが、「引き比べる」「各辞典の特徴を考える」という行為を紹介し、実際にやっていたのはなかなか画期的でした。

明鏡の紹介では「明鏡は誤りに厳しいが、中でも優しく接している例」などを紹介していて、『このコーナーで扱う単語をまとめるのも一つの意志が見えるものだなあ』と思いました。まとめるというのは楽しいね!

(こちらは前回の国語辞典ナイトでも「辞書ごとの人格を見つける」と言っていましたね)

辞書好きが身内でやっているイメージだったので、引き比べなどの楽しみ方がこの調子でガンガン市民権を得て、みんな複数の辞書を所持して引き比べをするようになるといいと思います。

 

後半の「用例採集」では、新たな言葉を採集し考察する、という辞書の制作過程を切り取ったものでしたが、身近な例から扱っていたのが面白かったです。

全ての感じにルビが振ってあるから(笑)(悲)の読みがわかる、といったくだりはなるほど! と唸ってしまいました。

「試合う」から先祖帰りを見出すセンスもすごいなと思いました。

 

各語釈から想起する「おたく度」、そしてジャン国

 まずはこちらをご覧ください。

こちらは『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治)の、「週間少年ジャンプ」2008年48号に掲載されていた話の1ページです。

(引用できる条件を満たしているか非常に不安です、アウトなら早急に消します)

f:id:ktzkn:20160114002008j:plain

この画像はTwitterなどでもたびたび見ますね。説得力がある画像です。

 

国語辞典好きにも大体同じことが言えると思うのですが、少し形相が変わってくるんじゃないか、と思った次第です。

さて、どこが異なるかというと、「データ等お互い知っていて当然だから」が通用しないのです。

新明解の「恋愛」など、あまりに有名な項目は、あえて語られることもなく、「辞書好きならば知っているであろうデータ」と言っても過言ではないかと思います。

しかし、小型辞書でも数万の語が扱われているわけですから、すべてのデータを知っていて当然、ということにはなりません。むしろ、具体的な語釈をピックアップして話を進めても、毎回違う楽しみが見つかると思うのです。

自分は国語辞典好きの中でも若輩者なので、どんな語釈が出てきても新鮮な気分で楽しめているのかもしれませんが、例えば今回の「ジャン国」の存在は、”おたく度1000の国語辞典マニア"であっても、かなりの驚きがあったのではないでしょうか。

(ジャン国めちゃくちゃ欲しくなりました。そんな方も多いのでは?)

 

総括

そうやって、重要なところをおさえた良い企画だったなあ、と思っていたところに、かつて僕に辞書の楽しみを教えてくれたながさわさんのツイートを見つけました。

 いやー本当にそう思う! 重要かつ基本的な楽しみ方を推したイベントだっただけに、辞書について今回のイベントのように楽しんだり、辞書について語る場が増えたりすると何よりだと思います。

自分のようなタイプの人間にとっては、創作意欲もたいへんに刺激されるイベントだったので、また言葉の海に身を投じ、何らかの制作を行ってみたいなあと思う次第です。

 

ところで僕は「たほいや」をやりたいです。もう2年と少しの間「たほいや」をやっていません。広辞苑の『意志』はともかく、「たほいやをやりやすい」という特徴は間違いないものだと思うので、存分に活かしたいな~。